札幌大学の「未払賃金支払等請求事件」訴訟の結審における意見陳述

  • 2017.01.25 Wednesday
  • 11:04

札幌大学の「未払賃金支払等請求事件」訴訟の結審における意見陳述

 

 札幌大学の教授13人が「賃金引き下げは無効」を訴えて、2013年9月に札幌大学を提訴した裁判が、2017年1月12日に札幌地方裁判所で結審(すべての審理を終了すること)となりました。この日、原告側を代表して、八鍬幸信先生が意見陳述を行いました。その内容は、格調が高く心を打つものでした。そこで、本ブログにも掲載し、真摯に教育を行なおうとして闘っている仲間の想い・姿勢を共有したいと思います。

 意見陳述書の掲載を許可して下さった札幌大学の八鍬先生はじめ原告団の皆様に感謝申し上げます。裁判の概要は以下の通りです。なお、この裁判は、3月30日(木)11:00から札幌地裁で判決が下されます。傍聴しましょう!

 

【裁判の概要】

 定年の引き下げ(70歳から65歳に)に伴う賃金引き下げが、労使協定で合意していた額(800万円)からさらに大幅に低い額(480万円)に、一方的に引き下げられた事に対する裁判です。(提訴は2013年7月18日付)

 訴えたのは、札幌大学の教授(66~69歳の男女13人、後に1名追加)で、詳しい提訴理由は以下の通りです。

 「われわれ原告は、本学の勤務延長制度に係り2013年4月から突然一方的に実施された任用対象年齢及び校務分担の区分廃止、休職規程廃止、定年年齢経過措置に伴う暫定措置廃止、大幅な賃金切り下げ(年俸額800万円から480万円への減額)などが、すべて違法無効であることの公正な判断を求めて、同年7月、札幌地方裁判所に訴えを起こしました。本訴訟は、労働協約違反ならびに労働条件の一方的不利益変更を糾すものであることはもちろん、本学が創設以来これまで蓄積してきた知的資産を将来に向けて継承し、有為な人材の育成を図るための健全な職場環境の構築を目指し、勤務延長教員有志の義憤の発露としてまったく自然発生的に惹起されたものでありました。」(「原告の会」代表から発信された証人尋問への傍聴要請文(2016年9月25日付)より)

 

 

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2017年(平成29年)1月12日

 

原告「意見陳述書」

八鍬幸信

 

 私たち原告は、2013年4月から突然一方的に改定施行された、本学の勤務延長制度に係る「勤務延長任用規程」、「任用基準内規」、「給与支給内規」がすべて違法無効であることの公正な判断を求めて、同年7月札幌地方裁判所に訴えを起こしました。とりわけ、800万円から480万円への減額という大幅な年俸額切り下げは、勤務延長制度の導入に伴う1千数百万円から800万円への不利益変更に続く更なる不利益変更として、到底容認できるものではありませんでした。

 この裁判は、直接的には逸失した労働条件を回復するための闘いでありますが、合わせて,本裁判の究極の目標は、有為な人材の育成・輩出に資する健全な職場環境の構築を目指して日夜奮闘している本学教職員の尊厳を断固守りつつ、社会にかけがえのない高等教育機関としての札幌大学の維持発展を目指すところにありました。

 この裁判が始まって以来、この1月でほぼ3年半を迎えようとしております.この間、我々原告は、30数回に及ぶ会合を重ね、真剣に意見交換を行って参りました。原告14名が一体となって闘いを継続できた背景には、本学の知的財産を後世に残したいという共通の意志・思いはもとより、被告に対する原告の根強い不信感が通奏低音として流れていたのではないかと推量されます。この点について、「和解協議の過程」と「札幌大学の統治組織」という2つの観点から言及しておきます。

 第1に、われわれ原告は、和解協議の過程に関し被告に対して大いなる不信感を抱かざるを得ませんでした。

 2016年2月に、札幌地方裁判所から,原告と被告双方に対して和解協議に係る打診がありました.私たち原告は、本学の将来を憂いまた係争の早期決着を願い譲り合えるところがあれば譲り合おうとの考えの下、勤務延長教員の権利が私たち原告だけでなく、すべての勤務延長教員さらには今後勤務延長に入る教員にも同様に保障されるべきことを第一義と考え、原告全員一致の下に被告との和解協議に臨みました.そして「このことが明確に保障されるのであれば、賃金の減額については一定の譲歩も止むなし」と判断しました.私たち原告は、担当裁判官が示した枠組みに沿いつつ、12項目からなる和解協議案を作成し、合意形成に向けて真摯に努力を重ねました.しかしながら被告の対応は到底納得できるものではありませんでした.すなわち、第1に2013年4月の「勤務延長任用規定」,「任用基準内規」及び「給与支給内規」の規程改定手続きの瑕疵について謝罪はしない、第2に和解により成立するであろう新しい「給与支給内規」については、原告以外の勤務延長教員に対しては原告らと同じ取り扱いをしないと主張して、この和解協議の核心部分の受け入れを全面的に拒絶したのでした.そして不払い賃金については、原告のみを対象に、しかも減額して支給するという驚愕すべき内容でした.

 被告のこのような頑なな態度はまったく受け入れ難く、私たち原告は、和解による解決は望めないと確信し、やむなく和解協議を諦め、判決を仰ぐことを決意しました。

 その約半年後、裁判所から2度目の和解協議の提案がありました。本提案に対しましても最初のときと同様の趣旨に則って協議に応じました。

 まず、この2度目の和解協議の最初の局面で、われわれ原告は和解条項9項を削除した和解案の受け入れを迫られました。この9項は、次のことを求めるものでした。

 一、和解により改正されることになるであろう教員勤務延長任用に関する給与内規について、和解成立後5年間、教員に不利益に賃金額を変更しないこと。

 一、就業規則、賃金規程、教員勤務延長任用規程等いかなる名目でも、賃金額において前記給与支給内規と抵触する別規定を制定しないことを相互に確認すること。

 われわれ原告としては、この条項を削除した和解案は到底受け入れられるものではなく、和解を諦め、判決を求めることとしました。

 次いで、われわれ原告が和解条項9項の削除を拒否すると、被告は、その場で、もともとの和解協議案の条項すべての受け入れを申し出て参りました。

 ここで丸呑みするなら、どうして最初の和解協議において受容できなかったのか。われわれ原告には、被告の態度は原告を愚弄するものであり、ひたすら原告の分裂を待つべく時間稼ぎをしているかのごとくに見えたものでした。

 第2に、われわれ原告は、教育・研究機関としての札幌大学における統治の在り様に対して大いなる不信の念を抱かざるを得ませんでした。

 教育・研究環境の改善のためには、われわれ教職員の労働条件や職場環境の改善が重要な課題の一つと考えます。しかし、われわれ原告は、教授会に直接参加することによって意思表明を行う機会が封じられているという、今日の本学における教学組織のガバナンスの在り様に深い失望の念を禁じ得ないところでした。具体的には次のようなことです。

 一つ、この裁判の重要なポイントでもありましたが、勤務延長制度の周知に関し、教学組織の最高責任者としての学長から納得のいく説明を受けたことはありませんでした。

 一つ、私たち勤務延長者は勤務延長期における担当科目について、教授会を含む然るべき教学組織を通じて意見表明する術を持つことが今日に至るもできないでおります。

 一つ、勤務延長期における校務分担について異議を然るべき教学組織を通じて表明する術を持つことができませんでした。

 一つ、本学の教員は、改正寄付行為の下で、「教育職員」と括られ、教育・研究に携わる専門教授職としての社会的立場をないがしろにされております。

 こうした教学組織の統治体制の下でわれわれ勤務延長者が教育研究職としての社会的立場を守り抜くためには、裁判に訴えるしか途はなかったのです。

 私は、この3月で札幌大学を退職いたします。昭和58年4月に本学に職を得てこの30数年間、経営学ならびに情報学分野の教育・研究に携わって参りました。この退職の年度に原告として、判決を待つ境遇に立ち至るとは、入職当時には想像だにしませんでした。こうした思いを残した勤務延長者が、来年度以降も生まれてくる状況というのは慙愧に堪えません。

 札幌大学創設以来,約半世紀が経とうとしています.私たち原告は,本裁判が一刻も早く終結し、本学がこれまで営々と蓄積してきた知的財産を将来に向けて継承していくために、本学関係者が一丸となって闘いのスタートラインに立てる日が訪れることを切に望んでいるところであります。この点を最後に申し述べ、意見陳述に代えさせていただきます。

以上

 

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